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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




『さっき、言ったよね。
これは、欲。気持ちとか、関係ない。』

『違うって!
…なんでそんなに、俺を拒否んの?』

『…いっちゃんは、静の生き甲斐だし。
未来も将来もある若者だし。
だからこんな色ボケババアに
これ以上、近づいちゃダメ。
一回Hしたら、
年上への好奇心も満足したでしょ?』

『…頼むから、』

言ってることは、わかる。
"今という時間"や
"母親"や"彼女"を大事にしなくちゃいけない、
…ってこと。

でもそれは、
"綾ちゃんを大事にしちゃいけない"
ってことと一緒じゃないだろ?

『頼むからさ、綾ちゃん、
自分で自分のこと傷つけんの、やめろよ。』


…暗がりの中、
それでもハッキリ見えた顔。

さっきまでの"女"の顔でも、

一緒に暮らしてた時に毎日見ていた
明るくてしっかりした"主婦"の顔でも、

"K"で見た"働く人"の顔でもなく、

自分を蔑む、渇いた表情。


…こんな綾ちゃん、初めて見た。
というか
女の人のこんな裏側の顔、初めて見た。

俺の周りの大人の女を思い返す。
母や、外の家族の女性たち、先生。
…みんな、いつも元気で明るいけど、
こんな顔、することがあるんだろうか?

綾ちゃんの口から絞り出される、
ギリギリ、と、心の軋む音みたいな
苦しい声。

『…自分で、傷つけなきゃ。
みんな、優しいから、
あたしが自分で傷つけなきゃ。』

『…なんで?』

それは、呪文のように。
淡々と。感情もなく。

『あたし、誰も幸せにしてない。

夫のことも愛して結婚したはずだし、
息子には親の都合なんて関係ないし、
親友の静の息子にドキドキしてるし、
いっちゃんの彼女にも申し訳ないし、
いっちゃんにも、秘密作らせてるし。

あたしが思った通りに動くたびに、
誰かに申し訳ないことになっちゃう。

…だから、忘れないようにしないと。
あたしは、
自分勝手でダメな色ボケババア。
みんなを傷付けてきたんだから、
それ以上に傷つかなくちゃ。』


…こんなに苦しい言葉なのに
スラスラと
止まることなく言える、ということは、
きっと、
何度も何度も
自分に言い聞かせてきたんだ。

それがこんなに伝わってくるのに、
俺、なんて言っていいかわかんなくて。

悔しいけど、
まだ青っちょろいガキだ…

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