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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




俺が隣に座ると、
綾ちゃんの両腕が
そっと背中にまわって、

俺の胸に
ギュッとおでこが押し付けられる。

やがてその辺りに
暖かい息が深く深く当たり始め、

俺の着ているネルシャツが、
少し、涙を吸い込んだみたいに
やわらかくなった気がして…

同じくらい、
気持ちもやわらかくなった気がする。
…多分、俺だけじゃなくて、
綾ちゃんの気持ちも。



静かな泣き声は、
そう、長くは続かなかった。
スンスン、と、鼻をすするような音。

『トマトの匂いがする…』

…ぁ。

『そういやさっき、ここ来る前、
トマトラーメン、食ってきた。』

ククッ。
俺の腕のなかから見上げて笑う。

『香水の香りじゃないところが、若者っぽーい。』

あーぁ。

『…やっぱ俺、ガキだよなぁ…』

『そんなことない。こんな優しいハグ…』

見上げていた顔が、
もう一度、俺の胸のなかに埋もれて。

『すごく優しい、男の人、だよ。』

男。
いっちゃん、じゃなくて、
男、として見てほしい。

『…綾ちゃん、俺、』

そのまま、ギューッ、と抱き締める。
なんて、誘おう?
なんて、気持ちを伝えよう?

言葉を探していたら、
先に、綾ちゃんの方が口を開いた。

『あんまり優しくされると、私、
一番、封印してたはずの、
自分でも見たくない私に変身しちゃう…』

『…どんな自分?』

『自分の年齢もわきまえず、
息子くらい年の離れた男性に甘えて
すがってしまうような、飢えた淫乱ババア。』

『言い過ぎだろ(苦笑)』

ひどい自虐だけど、
そこには、
素直に言い寄るわけにはいかない
綾ちゃんなりの立場と苦悩が
見え隠れしてる。

『…だけど、そんな危ないひと、
夜の街に野放しにしておくわけには
いかねーよな。それに、』

『それに?』

『俺は、見てみたい。…淫乱な、綾ちゃん。』

今の俺に言える、
最上級に頑張った口説き文句を、

『どうしよう、私、ドキドキしてる。
ダメって言わなきゃいけないのに、
拒みきれない…』

笑わずにいてくれたということは、

『綾ちゃん、』

二人だけの秘密を、

『いっちゃん…』

共有する準備が、

『キス、』

整った、と思って

『して。』

いいんだよな?


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