第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
淡々と語る綾ちゃんを
そっと見る。
頬が赤いのは、酔ってるせい。
時々、グラスを回しては
氷をカラカラ言わせてる。
それほど、悲しそうでもない。
もちろん、楽しそうでもないけど。
『昼間、ちゃーんと掃除洗濯して、
夜ご飯もね、子どもがいないから、
大人向けの、お酒にあうメニューを
作ってみたりして。
二人でゆっくり過ごすようになったら
第二の新婚生活みたいになるのねって
あれこれ想像してね。
…CMであったりするじゃない?
ほら、休みの日に二人でカレー作って
昼間から乾杯しちゃうような。』
『二人で、
子どもが小さい頃のアルバムを見ながら、
"お互い、年取ったな"、みたいな?』
『そうそう、まさにそういう感じ!』
綾ちゃんは、楽しそうに笑った。
…だけど、笑顔はすぐに消えた。
『でもね、そんなこと考えてたの
私だけだったみたい。』
あっという間に、表情が曇る。
…寂しそうな顔。
『夜も、帰ってくるの遅いし。
せっかく作っても、
結局、うちで食べない日も多いし。
子どもがいた時は気にもならなかったけど
ご飯の時間をあわせるって、案外、大変。
でも一人で夜ご飯食べるのも、寂しいのよ。
黙ってもくもくと食べながら、
段々、マイナス思考になったりして。』
…ズキン、とする。
俺、夜は誰も家にいないけど、
ほとんど一人で飯食ったことは、ない。
母さんのこだわり。
"一人で食事をさせないように"って。
寂しい、なんて思ったこと、なかった。
俺、守られてんだなぁ…
『いろいろ考えてみたのよ。
家だから盛り上がらないのかな、
とか思って、
夫の誕生日に、外に食事に誘ってみたの。
夜の町でご飯食べたりお酒飲んだりすれば
デートっぽくなるかも、なんて思って。』
大人の、デート。
『いいじゃん、そういうの。』
『ネットでいろいろ調べて、
雰囲気のいいお店、予約して。
二人で外食なんて、
それこそ10年ぶりぐらいだったから、
オシャレしてプレゼントも準備して。』
『盛り上がった?』
『家にいる時よりは、会話も弾んだかな。
でね、
お店出たら、人がいっぱい歩いてたから
私、思いきって、腕、組んでみたの。
少し酔ってたから足元ふらついてたし。』
『うん。』
『そしたら、』
綾ちゃんは、
自分のてのひらを見つめて。
