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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




放っておけない、と思うのに、
どんな言葉をかけたらいいのか、
ぜんぜん、わからなくて。

『…俺、なんで高校生なんだろ。』

『…え?』

『もし大人だったら、こういう時、
なんか、優しい言葉とか
かけてあげられんのかもしれないのに。
全然、そういうの、思い付かねぇよ。』

『…いっちゃん、』

綾ちゃんは、ニッコリと笑って。

『今の言葉で、もう充分。』

そして、

『さ、気をつけて、帰りなさい。』

…無理矢理、背中を押される。

『ちょ、綾ちゃん、待…』

『進路、早く決まるといいね。
彼女と、仲良くするのよ。
部活やめたからって夜遊びしてないで、
ちゃんとご飯食べて、早く寝ること。』

母親みたいなことを言いながら、
そして、最後にはっきりと、

『もう、来ちゃダメよ。』

そう言って、
バタン、と閉まるドア。

シーン、と静まり返った通路に
急にガタンと音がしてびっくりする。

店のすぐ横、エレベーターが開いて
酔い客が数人、降りてきた。
綾ちゃんの店を通りすぎ、
スナックらしいドアを開くと

ギャーン…と響くカラオケの音と、
『あらー、いらっしゃーい!』という
酒焼けしたような嗄れた女性の声。

ドアが閉まると、
また、静寂が戻ってきた。

隣で、俺を待つように
ポッカリと口を開けてるエレベーター。
…勝手に足が箱に乗り、
勝手に指が一階のボタンを押す。

夜の街は、
酔っ払った大人が歓迎される場所。
俺みたいな高校生がいちゃいけないことは
この街で育ったからこそ、重々、承知だ。

エレベーターが一階に到着して、
急に、ざわめきに包まれると
現実を自覚し、気持ちも諦めに変わる。

しょーがない。帰ろ。
今、何時だ?

スマホを見ようと、
ポケットに手を突っ込む。

『…ぁぁっ…』

ない。
忘れてる。
間違いなく、
綾ちゃんの店のカウンターだ。

ついさっき、
『もう来るな』って言われたばっかり。

今さら、行きづらい…

けど、なくちゃ、困る…

…一瞬だけ。

スマホ取って、
綾ちゃんが怒る暇もないくらい、
すぐに店を出てくればいいよな?

振り返り、
今、閉じたばかりのエレベーターの
上向きの矢印ボタンを押すと、

ドアは、すぐに開いた。

…まるで、俺を待っていたみたいに。



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