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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



なにもわからない。

店の名前も、場所も、
はたしてそれが綾ちゃんなのかさえ
わからないというのに。

俺の足は、
家ではなく、
夜の街の方に向かってしまう。

…帰りたくないんじゃなくて、
今夜のうちに探さないと
もう、二度と会えない気がするから、

思いきって、
自分の意思で、
酔い客の波にのまれる。

なじみの場所ではあるけれど、
こんな時間までブラついたことはなく、
少し緊張しながら、
それでも、
酒とタバコの匂いのする路地裏を
ずんずん歩いた。

まずは、さっきの場所。

コーヒーを飲みに行った二人は、
あっちの方に歩いていったよな…

二人の後ろ姿を思い出しながら
そっちにむかって歩く。

限りなく続く小さな路地に、
無限に光る、ネオンと看板。

店の名前もビルの名前もわからないのに
探し当てるなんて、不可能に近い。

目的地の情報は何一つないというのに、
探すのをやめようとは思えなくて、

路地のひとつひとつ。
三階建て以上のビルのひとつひとつ。
すれ違う人の匂いや会話のひとつひとつ。

どこかに何か、ヒントがないかと
祈るような気持ちで。

…諦めたら、もう、
二度と会えないかもしれない。

何で
黙っていなくなったのかを、聞きたい。

もし、
あの時キスしたことを怒ってるなら
ちゃんと謝りたいし、
そうでなくて、
本当にただ独り立ちするためなら
ちゃんと世話になったお礼を言わないと。

とにかく、
自分の気持ちにケリをつけたくて、
ひたすら無心に歩いた。


…?!

あの後ろ姿、
おっちゃん達の"かかぁ"
…コーヒーを飲みに行った奥さん達?


ビルから出てきた二人は、
俺に気づかないまま反対側に消えていき、

俺は急いでそのビルの前まで走った。

…四階建て。
入り口の古い案内看板からすると、
飲み屋とか、小さなステーキ屋とか、
ワインバーが入ってるビルらしい。

コーヒー屋らしい名前は、ないけど。
まだ新しすぎて
間に合ってないのかもしれないし。

…エレベーターを呼ぶボタンは、
気付かないうちに、押してた。

四人も乗ればいっぱいになりそうな
小さなエレベーターの中は、
ビールやワインや肉の匂いがしていて、

その中にほんの少し、
コーヒーの匂いがする気がする。

気のせいかもしれないけど。
気にしすぎかもしれないけど。


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