第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
そんなことを考えながらも、
この人達の存在に、心から感謝する。
…今の環境だと、俺、
将来、誰かと暮らす、とか
結婚とか、想像できなかったかも。
自分の親ではないけれど、
目の前で、
色んな形の夫婦が
色んな形の人生観を見せてくれることが
どれだけ俺の"普通の感覚"を
維持してくれていることか。
『…一静、10時になるよ、
そろそろ帰りなさい。またおいで。』
俺がそうやって女将に促されると
一緒に食べてたみんなも立ち上がる。
『寒くなってきたなぁ。
シメにラーメン、行くか。』
『じゃ、あたし達はコーヒー飲んで帰ろうか。』
いつもの流れ。
『一静、新しいラーメン屋、連れてくから。
おっちゃんに奢らせろ。』
『一静、奢ってもらうのはいいけど
ビール飲んじゃダメよ!』
『わかってるー。』
男3人連れだって
夜の街のラーメン屋へ。
女性2人は、いつもの駅前の…
あれ?
あっち?
手を振りながら、
いつもとは違う方向へ消えてく女性二人。
『…いつもの駅前のWELOCEじゃないんだ?』
おっちゃん達は、
奥さん達の行く先など気にも止めず
俺の背中を押して酔い客の波にのる。
『最近出来た店がお気に入りなんだと。
なんで飲んだ後にコーヒーだろな?
女の考えることはわかんねぇわ!
なぁ、一静?!』
『うん。俺、酒、飲んでないけど
シメはコーヒーよりラーメンがいい。』
『だろ~、やっぱ一静、わかってんなぁ!
早く成人しろ、一緒に飲みに行けるのを
楽しみにしてんだから…ここ、ここ。』
かわいいイラストつきの赤い暖簾。
『"トマト辛麺"?初めて聞く!』
『だろ?"リコピンたっぷり"だってさ。
なんだよリコピンって。
女の子かっ?りーこぴんっ!』
酔ってご機嫌なおっちゃん達は、
にんにくたっぷりトッピングを。
俺はチーズトッピングを頼む。
『はい、おまたせしました~、
にんにく2つにチーズ1つ!』
…辛麺を持ってきたのは、
チャキチャキしたお姉さん。
『あら、お客さん!
いつもありがとうございます!』
声をかけられて、
デレデレのおっちゃん達。
『…おっちゃん、もしかして
トマト麺より店員目当て?』
『バレたか。
一静、かかぁには内緒にな(笑)』
『手ぇ出した訳じゃないんだろ?
見てるだけならいいじゃん(笑)』
