第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
…毎日のなかで
小さな変化が積み重なるのは
当たり前のこと。
そうやって人は
成長したり
進化したり
学習したりして
前進していくはずなのに、
小さな変化が積み重って
むしろうまくいかなくなるのは、
何が悪いんだろう?
…烏野に、負けた。
よりによって、最後の試合で。
あの岩泉が、泣いた。
"あうん"の二人ならではの
完璧なプレーを決めきれなかった自分を
自分で責めながら。
あの及川が、泣いた。
"みんな、ありがとう"なんて
アイツらしくない言葉を言いながら。
最高・最強のはずだったチームは、
結局、
宮城を越えることすら出来なかった。
…母さんのことが、何かと許せない。
肝心なことは何も話してくれないのも、
綾ちゃんがいなくなったことを
全く残念がってない雰囲気なのも。
俺は、母さんの何なんだ?
母さん自身は
何も変わらないのかもしれないけど、
俺はなんだか、顔を見て話したくなくて。
…実は彼女とも、ギクシャクしてる。
あの 卒処女した日以来、
何度か彼女から
"抱いてほしい"アピールをされている。
ハジメテがあまりに慌ただしかったから、
"ちゃんと"したいのだろうけど、
正直言って、あの日、
ものすごく気を使って抱いた挙げ句、
窓から犯罪者のように逃げたことが
俺にとっては軽いトラウマで、
会うのがちょっと面倒くさい。
…"あの日"を境に、
いろんなことが少しずつ
ズレてきている自覚がある。
"あの日"。
綾ちゃんが、突然いなくなった日。
俺はあの日、何を失ったんだ?
いなくなった綾ちゃんの代わりに
何を補えば、
このチグハグな悪循環から抜け出せる?
…かけ違えたボタンみたいに
小さなズレを感じたまま、
それでも毎日は繰り返す。
ぱったりバレーをしなくなり、
昼飯は、
朝、黙って受けとる母さんの弁当を
一応、彼女と一緒に食べる。
放課後は、
部活をしてた時には出来なかった分、
及川達と遊びにいったり。
なんとなく、
脱け殻みたいな毎日。
進路も、
及川は体育大学、
岩泉は教職課程、
花巻は美容専門学校と、
みんなそれぞれの目標に向けて
決めているらしいけど、
俺はそれすらどうでもよくて。
…もしかして俺、
思春期真っ只中、ってやつ?