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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




ベランダから塀の上に移り、
そこから裏の道へ。

無事に道路に降りてから
急いで服の乱れを直す。

…こんな姿、この近所の人に見られたら、
ホントに女子高校生の部屋に忍び込んで
逃げてきた犯罪者で通報されっぞ…

俺、何やってんだ。
なんか、何もかも、消化不良だ。
…腹、減ったな。
そういや、晩飯も食ってねぇ。
風呂にも入りたいし。

とりあえず、帰ろう。

こんなに家に帰りたいのに、
家に向かう足取りは重たくて。

『…ただいまー。』

もしかしたら、
もしかしたら、綾ちゃんが

『昨日は何も言わずに出ていってごめんね!
いろいろ、急いでたもんだから。
…ご飯、作っておいたから、
食べながら、ちゃんと話す。』

っていう展開にならないかな、って
薄い希望を抱いていたけど、



家の中からは、物音ひとつ、しない。

とまったままの空気。
母親が出ていった時のままらしい
ほんのりと残った、香水の香り。
ついているのに寂しく感じる部屋の明かり。

こんなに疲れてて、
腹も減ってて、
喋りたいこともたくさんあるのに、

なんで、誰もいないんだよ…

なんか、誰に対しても、腹が立つ。

いつも家にいない母親にも、
そもそもうちにいない父親にも、
黙って出ていった綾ちゃんにも、

コンドームなんか渡す及川にも、
途中で帰って来た彼女の親にも、
中途半端に誘ってきた彼女にも、
…それにのってしまう自分にも。

『ばーか。』

口に出して言ってみる。
…もちろん、
返事もなければスッキリもしない。

『腹、減ってるんだから。』

…自分に言い聞かせないと
動く気すら、しなくて。

ノロノロと冷蔵庫の前へ行き、
綾ちゃんが残していった
冷凍されたおかずを、全部、出す。

跡形もなく、食ってしまおう。
ここには、俺と母親以外、
いたことがなかったことにしてしまおう。

父親と、一緒だ。
生きてても、
最初からいなければ、
別に、寂しいなんて思わない。

綾ちゃんも、
どっかにいるんだろうけど、
一緒に暮らしたことは、
そもそもなかったことにする。

そしたら、
前の暮らしに戻るだけ、だろ。

チーン。
チーン。
チーン。

次々に温めて、
次々に食べる。

いろんなことがあった2日間を、
何もなかったことにするために。

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