第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
さっきまで
あんなにフツーに話してたというのに、
今、俺も、彼女も、無言のまま、歩く。
…カサッ。
手持ちぶさたが居心地悪く、
歩きながらポケットに突っ込んだ手に
ツルツルした四角い手触り。
あめ玉とかじゃない。
さっき、及川から手渡されたコンドーム。
"お守りがわり"って言ってたけど、
どういう意味のお守りだ?
本当に、
"お守り"として忍ばせたままなのか、
それとも、
まもなく使うことになるのか。
『ここ、うち。』
住宅街の中、割と新しい一軒家。
車の止まっていない駐車場を
横目に見ながら、玄関に向かう。
彼女が鍵を開け、
"ただいまー"と中に声をかけて
返事がないのを確認してから
こっちを振り向いた。
『…誰もいないから。どうぞ。』
誰もいない、と言われても、
なんとなく、無言では入りづらい。
『おじゃま、します…』
俺の前を歩く彼女についていくと、
階段をあがり、
ドアをカチャリと開け、
パチンと電気をつける。
『ここ、私の部屋。
センパイ、ちょっと中で待ってて。
あたし、手、洗ってくる。』
俺を部屋に入れ、
ドアを開けたまま
トントン…と
階段を下りていく足音を聞きながら、
部屋のなかを見回してみた。
…思ってたより、女子っぽい。
好きだと言っていたアイドルの
映画のポスターがはってあって、
ディズニャーシーのキャラクターの
熊の縫いぐるみがペアで飾ってある。
机の上は片付いてて、
壁ぎわに、タンスとクローゼット。
そして、
ベッド。
木のフレームに、
明るいグラデーションのストライプの
ベッドカバーと、お揃いのまくら。
…俺達、ここで、
今からセックスするのかな?
ええと、あ、あった。
ティッシュは、ベットの上の棚の所に
目覚ましと一緒に並んでて、
ゴミ箱は、勉強机の横だな。
よしよし…
って、俺、結構、ヤル気じゃん?!
なんとなく下半身に力が入ってきた気が…
ポケットの中のコンドームが
カサッと音をたてた。
…及川、やっぱお前、すげーよ。
俺自身はそんなつもりなかったのに、
もらったお守りとアドバイス、
早速今日、使うことになるかもだ…
ゴクリ、と唾を飲み込んだ時、
またトントンと足音が近づいてきて
彼女が戻ってきた。
『センパイ、これ…』
?!
彼女が持っているものを見て、
驚く。
