第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
『待たせてごめん!』
『うぅん、大丈夫。…及川先輩たちは?』
『帰った。』
『今日も、別行動させちゃった?』
『ぜーんぜん。アイツらとは、
イヤってほど毎日、会ってるから。
…それに、今日は一緒に帰ろうって、
俺から誘ったんだし。』
帰る時間を少しでも遅らせたくて。
もう、家に帰っても、
誰も俺を待っててくれないから。
『センパイ、家まで送ってもらっていい?』
『いいけど。珍しいじゃん。』
彼女は、彼氏がいることを
家族には話してないらしく、
『見られたらウザい。』と
いつも、仙台駅から先は別々に帰るのに。
他愛ない話をしながら
彼女の家の最寄り駅まで一緒に行き、
電車を降りて、駅前の道を歩く。
静かな住宅街に差し掛かったとき、
彼女が、言った。
『センパイ、時間、大丈夫?』
『あぁ、かまわないけど?』
『うちに、寄っていかない?』
『え?!』
突然の申し出に、マジでビビった。
…ど、どーいうことだ?
『さっき、ママから連絡があって。』
差し出されたスマホの画面。
"お兄ちゃんが風邪ひいたみたいだから
ちょっとお父さんと様子見てきます。
ご飯はキッチンに準備してあるから
温めて食べてね
たいしたことなければ、
ママ達もすぐ戻るので留守をよろしく。"
『お兄さんは、どこに住んでんだっけ?』
『うちから車で二時間くらいのとこの
大学行ってて、一人暮らししてる。
…だから今、うち、誰もいないの。』
親がいない彼女の家に誘われた。
しかも、昨日、初H未遂。
これは…どういうことだ?
もしかして…そういうことか?
『でも、もう、帰ってくる頃じゃ…』
『このメッセが5時に来てるから、
行って帰るだけでも9時までは絶対、
帰ってこないもん。
…早くて、10時じゃないかな。』
今、8時をまわったところ。
どうする?どうする?
『…ダメ?』
…別に"セックスしよう"って
誘われたわけじゃないのに断るのは
むしろ考えすぎじゃないか?
『ダメってわけじゃ、ねぇけど。』
独り言みたいに返事した俺を、
彼女がホッとした顔で見つめて。
『じゃ、行こ!』
うわぁっっ。
心の準備、ゼロのまま、
"彼女の実家"にあがりこむことに。
…このシチュエーション、
及川だったら興奮すんだろなぁ。
俺は…き、緊張しか感じない…
