第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)
…そこまで言って、口ごもる。
俺、及川に何を相談するつもりだ?
綾ちゃんがいなくなって
自分でも驚くほど動揺してること?
それを話すなら
綾ちゃんがうちにいた理由とか
キスしたことも話さないといけない。
それは言いたくなかった。
及川のことだ。絶対、
『まっつん、ズルい!年上熟女、羨ましい!』
…とかってネタにされて
(しかも勝手に過剰な妄想までされて)
話は終わるだろう。
『どーしたのさ?彼女と何かあった?』
…あ、それだ。
そっちの話題なら及川の得意分野(笑)
『な、及川、』
周囲に人がいないことを確認して、
小さい声で話しかける。
『そんな秘密めいた声で、なにさ?』
『お前、この間言ってたよな、
処女好きだ、って。
ハジメテの男になるのが喜びだって。』
及川の目がキラキラと光る。
『好き好き、だ~い好き!』
『そんなにたくさん、処女とシた?』
『う、うーん…』
一瞬、言葉を詰まらせた及川が
もごもごと、口を開く。
『1000人か、2000人くらい…』
『?!』
沈黙…そして笑いが込み上げる。
『一人か二人ってことか?
そんだけしかシてないのに、
"大好物、毎日食って腹一杯"みたいな
大袈裟な言い方してたのか?
お前、つまんねぇ見栄、張るなぁ(笑)』
『し、しょーがないだろ!
このオイカワ王子クラスに
果敢にアタックしてくる女の子なんて、
場数踏んでる経験者が多いんだから。
そんな中でのハジメテちゃんは、
益々、貴重な存在なんだよ!
そりゃ、大好物に決まってるじゃん!』
俺、及川のこういうところ、好きだ。
カッコつけなくても素材はいい男なのに
無駄に見栄をはるところ。
…こんなすげぇ奴でも、
他人に言えないコンプレックスとかが
何か、きっとあるんだろーな。
だからだろうか。
こんな相談も、及川になら出来る。
『昨日、彼女と初だったんだけどさ、』
『え?!まだシてなかったの?』
『んー。なんか俺、処女もらうの、
申し訳なくて…昨日も結局、未遂でさ。』
『ボヘーっ?!
何それ!今さらのいい人アピール?
それとも玄人マニアのテクニック自慢?』
『お前、ゲスだな(苦笑)』
『違う違う、ビックリしたんだって。
え?ま、まさか、
彼女の処女、俺にくれんのっ?!』
やっぱり、ゲスだ(笑)
