• テキストサイズ

~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)




昼。
いつものように、彼女と弁当を食べる。

『センパイ、昨日は、ごめんなさい。』

ごめん?何で謝る?

『謝られるようなこと、あったっけ?』

『…夜、私から誘ったのに、その、
うまく、ちゃんと最後までいけなくて…』

あぁ、そのことか。
あれ、昨日のことだっけ?

『謝ることじゃねぇだろ?
それを言うなら、俺の方こそ、だし。』

…沈黙。
お互い、悪いことはしてないのに、
謝るしかない展開になるのがイヤで、

だからといって、
"次こそキメようぜ!"
"今度は任せろよ!"
みたいなノリも嫌で。

『午前中に体育あると、すげぇ腹減る!』

弁当箱をあけて、箸を手に取る。

『今日は私も、ママに作ってもらった~。
センパイのおかず、なぁに?』

弁当箱を覗きこんできた彼女。

『…あれ?これ、
綾さんの作るお弁当じゃないよね?…』

あぁ、ホントだ。
今まで弁当なんて、腹一杯になれれば
それでいいと思ってた。

ここしばらくずっと、
綾ちゃんの作る丁寧な弁当で、

昨日は彼女の作った全力の弁当で、

それに比べてみて、初めてわかる。
母さんの弁当は"ドーン"としてる。

ご飯が、たっぷり。
メインのオカズも、堂々とたっぷり。
"腹一杯"を最優先にした弁当。

綾ちゃんの、女性らしさ。
彼女の、初々しい精一杯さ。
母さんの、忙しい朝なりの愛情。

四角い弁当箱の中に込められる、
それぞれの気持ちの違いに、
俺、今、気付いた。

『綾ちゃんは、もう…』

"出ていったから、いないんだ"

…それを口に出来なくて。

『これからは母親弁当だからさ。
またたまには俺にも弁当、作ってよ。』

『うん!私も、お料理、頑張ろぉ!』

無邪気に答えてくれて、助かる。

『そうだ、あのね…』

先生の噂話。話題の映画。
なんてことない話に相槌をうつ。

…昨日と変わらないのは、彼女だけ。

彼女は、

勝手にいなくなったり、
勝手に見送ったりしない。

大人の女は、勝手だ。

『なぁ、』

『ん?』

『今日、部活終わり、待っててくんないかな?
一緒に帰りたい。』

『7時くらい?』

『あぁ。』

『センパイから誘ってくれるの、珍しいね。』

『ダメか?』

『うぅん、嬉し。待ってるね。』

…俺だけに向けられた、笑顔。

/ 733ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp