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~愛ではなく、恋~【ハイキュー‼】

第6章 ~恋と恋の、あいだ~(松川 一静)



…カチャカチャ、という音と、
味噌汁のにおいで目が覚めた。

いつもと同じ朝。

ゆうべのことは全部、
夢だったんじゃないだろうか?
…そう思いたくて、ベッドから出られない。

ぼーっとした頭でうとうとしていたら、

『いーっせい、朝御飯、出来たよー』

…あぁ、
聞こえてきたのは、母の声。

夢じゃなかった。
全部、現実だ。
起きないと。

『おはよう…』

『おはよ。顔、洗っておいで。
久しぶりに親子二人の朝御飯~。』

仕事帰りで寝ていないはずなのに
朝から爽やかな顔をしている母。
感謝しなくちゃいけないのに、
なぜだか、素直になれなくて。

顔を洗ってブスッとしたまま、
母と二人、向かいあって朝飯。

『二ヶ月ぶりに朝から料理したわぁ。
もう、母の味なんか忘れてるんじゃない?』

そんなことないよ、とか
これこれ、この味、とかって
言うべき場面だとわかってるのに、
言葉が、どうしても、出ない。

変わりに口をついたのは、

『綾ちゃん、どこ行った?』

…まるで、
駄々をこねる子どものようだと
自覚があるのに、止められない。

『しばらく、
ウィークリーマンションに泊まるって。』

ウィークリーマンション?

『なんでだよ?』

『本腰いれて、自立するつもりみたいよ。
何か、お店を始めたいんだって。
そのためにまず、住むところを決めないと
いろんな手続きするのに不都合だから、
まず、住む場所から探す、って。』

『そんなん、
うちで暮らしながらでいいじゃん。
開業資金とか、少しでも貯めた方が…』

『私もそう言ったのよ。
でもね、ここにいたら甘えちゃう、
後戻りできないくらい追い込まないと
真剣になりきれないから、って。』

『…』

『私にはわかるから、止められなかった。
甘えたり頼ったりする心があると、
自分の決断が鈍っちゃうのよね。
後戻りできないくらい追い込まないと
覚悟って、なかなか出来ないもの。』

俺の立ち入れない世界の話。
子供扱いされてるみたいで、悔しい。

『…俺、なんも挨拶、してない。』

『ま、これっきりの別れじゃないし。
仙台に残るって言ってから、
いろいろ決まったら、また連絡あるわよ。
そんな寂しそうな顔、しないで。
あ、七時過ぎてる!
お弁当、出来てるからね。』

久々の母と二人の朝。
ごく普通の、二人暮らし。

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