第4章 友という花の名は①
「…え?旦那さん、天主でお勤めなの?!わたしも会ったことあるかな?」
長い廊下を2人で歩きながら、結衣の夫の話を聞いていた。
「主人は、美蘭様をよくお見かけするそうですよ。」
「わあ、本当?!会うのが楽しみ♡」
「あの…美蘭様?裏口で待てと言われたんですが…お城の奥に向かっているような…。」
「当たり♡」
「え?!」
「天主でお勤めなら、天主の近くで待たない?お花が綺麗な中庭があるの!そこは、天主から出てくる時に絶対通るから大丈夫!」
「わたしなどが…このようにお城の奥に立ち入って…良いのでしょうか…」
呑気な美蘭の顔と、いけないことをしているような、おどおどした結衣の顔は対照的であった。
「たしか天主にお勤めできるのは、信頼のおける優秀な武士さんだけだ…って、秀吉さんが言ってたよ?結衣さんはその奥さんだもん。大丈夫だよ!」
結衣の緊張を解いてやりたくて、美蘭は、秀吉から聞いた話を聞かせた。
「…!…信頼のおける…優秀な…?」
すると結衣は、
自分の夫が、城で信頼を受けて働いているのだということを実感して感動したらしく、目を潤ませ言葉を詰まらせた。
「針子仲間をいびるなよ?美蘭。」
その時、聞き慣れた声が聞こえた。
「…?光秀さん?!…皆さんも!お疲れ様です!」
いつもの如く美蘭を揶揄う光秀は勿論、
信長に呼ばれ天主に集まっていたらしい武将たちが全員、中庭の前の廊下に差し掛かった。
「その女、涙目ではないか。どんな意地悪をしたのだ?」
「な…っ!光秀さんと一緒にしないで下さい!」
「すみません…美蘭様から天主にお勤めできるのは名誉なことだと伺い…感動してしまいまして…。」
ニヤニヤ笑いながら揶揄う光秀に、必死な形相で反論しようとする美蘭。
その2人をおさめようと、必死に説明を始めた結衣は、頭を下げながら、武将たちに対してひどく緊張していた。
その声を聞いて、武将たちの後ろから、沢山の書簡を抱えている武士が顔を出した。
「…結衣…?!」
「誠一郎様!」