第2章 嘘つき者は小娘に恋をした〜光秀〜
日はだんだんと沈み帰っていた。
「柳波さん、馬を用意しているので、それに乗って帰ってください。」
と紅音は光秀に言う。
「紅音礼を言おう。また来てもいいか?」
と光秀が尋ねると紅音は、今日一番の笑みで
「はい、いつでもお待ちしております。」
と言った。
光秀は、心が張り裂けるのを我慢してすぐに安土城にある自分の御殿に向かった。
「光秀?どうした?」
「光秀さん?」
「光秀様?」
・・・・・・・・・・・・・・
光秀は、誰の声も聞こえなかった。
頭の中にあるのは紅音の声だけであった。
(俺は、紅音のことを好きになったのか?いや、そんなわけがない。ただ、助けられたからだ。)
光秀は、『好き』と言う言葉を胸の奥にしまって蓋をした。
「紅音に会いに行くか……」
光秀は縁側でぼっと空を見上げていた。