第16章 見えない鎖~三成~
すぐに足取りを止めた。
そして、その場にしゃがみこんだ。
「う・・・。」
さっき兄上が拭いてくれたのに・・・
再び私は涙を流した。
『母上』『父上』
私にとっては、全く思い出のない血のつながった大人であった。
いや、
思い出があるのは兄上が今川家に人質に言った時から
私が伊達家に人質になるまでの間、
ずっとひどい仕打ちをされた事だけだ。
だから、子供の頃の私はずっと泣いていた。
そして、伊達家に人質に行って政宗さんと会ってやっと心を開いたのだ。
しかし、いまでもあの頃の事思い出してしまう。
もういやだ。
何も思い出したくない。
そうやって、
いつも隠していた。
前の兄上のように。
しかし日和さんが来て、兄上は変わった。
その時思った。
ああ、私もう一人になっちゃったんだってね。
「純恋様?」
私はゆっくりと顔を上げた。