第1章 かげろうでいず〜家康〜
日和が呟いた猫は、今造っている途中の建物の下にいた。
日和は、助けに行く、と言って猫に近づく。
(あの猫……)
家康はその猫に見覚えがあった。
そう思った時、
「危ない!!!!」
と男の声が聞こえた。
日和のところに向かって大きな木が落ちてきているのだ。
「日和!!」
と家康が日和の名前を呼ぶと、日和はこちらを向いて
笑った。
その時
ガラガラガラドドーン!!!!!
木は、日和のお腹を貫いた。
「日和……?」
家康は、近づけなかった。
そして、その場に座り込んだ。
「日和、日和、日和、……」
家康は、日和の名前を呼びつづけた。
しかし、日和は無反応。
(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!!!!!)
「日和!!!!」
家康は、悲鳴と同じぐらいの声で泣いた。
そして、日和のお腹を貫抜く木の上のあの猫は、にたりと笑った。