第4章 土井先生と同居人 の段
それから、夕食等を一通り済ませる。
それでも、まださほど夜がふけきってはいなかった。
「さてと、そういえば、くんの布団どうしよう・・・」
部屋を見回し半助がそう呟くと、はブンブンと首と手を両方振った。
「あー、おかまいなく。床があれば・・・」
そう言いかけたを、半助は右手を突き出して遮る。
「ダメ。そんなことするわけにはいかないだろ」
と言いつつも、今ここにあるのは土井半助&山田伝蔵両教師の布団。
の性格的に、不在の山田先生の布団を勝手に拝借するくらいなら床で寝ると言い出すのは目に見えている。
「どこかから余ってる客用布団を・・・」
半助がそう言いかけたのを、今度はが手を突き出し遮る。
「面倒だからいいですよ」
と、は本当に床に寝る勢いで荷物を漁ら出した。
(布団を取りに行くのは私がやるから面倒でもいいんだけど・・・だいたい、布団をかぶって寝てくれた方が、私が気にせず寝れそうなんだけどなぁ)
半助はしばし考える。
布団で眠る自分の隣に、身をさらして眠るがいると思うと、いろんな意味できっと眠れない。
「一緒の布団で寝るわけにもいかないし・・・」
半助がボソッと言うと、はピシッと固まり、すぐにアセアセと動き出した。
「はい、そんな訳にはいきません!」
力いっぱいは否定し、さっきより大きく首を振る。
その顔はほんのり赤い。
半助は自分の発言につられて焦ると、やがてわざとらしく大きな声でこう言った。
「じゃあ、くんが私の布団で寝る。私が山田先生の布団を借りる。山田先生が戻られたらキチンと干して返すから。はい、決定!」
反論の余地を与えず言い、さっさと二枚の布団を並べる・・・二枚の布団の間には、キチンと隙間を作って。
「あ、ありがとう、ございます・・・」
はうつむき気味に言うと、布団を撫でる。
そして、少し嬉しそうに笑った。
その顔を見て、半助はフッと笑う。
温かい空間が返ってきたようだった。
(しばらくこうしていたいけど・・・)
半助は思う。
だが、残念な事に、『土井先生』の夜は終わっていない。
「見廻り行かないとな」
名残惜しそうに、半助は立ち上がった。