第2章 乙ゲーにハマった理由
「あ、どうも〜。こんにちは」
保育園の脆そうな木でできた門の向こうにいるのは、やっぱり葉月ちゃんのお父さんではない。
私がこんなにも怪しんだ顔で見ているというのに、にこやかにひらひらと手を振りながら、挨拶をしてきた。なに、この人。
「どの子のお父さんですか?」
私も負けじと、にこやかな顔を作る。
ここでもし、葉月ちゃんのお父さんだ、と名乗れば私の中で怪しい人決定。まあ、充分怪しいのだけど。
「俺は葉月の父の友人です。今日は俺の仕事が休みだったので、無理やり行かされたんです」
「なんだ……てっきり怪しいひ────」
がばっと自分の口を手で塞ぐ。
危ない危ない。もう少しで心の声が全て漏れるところだった。
「もう遅いですよ。俺のこと、かなり怪しんだ目で見てましたし」
じとーっとした目で見られ、申し訳なくなる。早とちりした私だって悪いけど、怪しまれる様なそっちだって悪いじゃん。……いや、勝手に決めつけた私の方に罪があるか。
「すみませんでしたっ!」
頭を深く下げて、謝罪する。
こんなんじゃ、保育園の先生失格だ。
「あははっ!怒ってませんよ〜。少しからかいたくなっちゃっただけです」
乙女の純粋な心を弄んだのか!?
「怪しむのが普通ですよ。それに、俺を早とちって怪しむくらいあなたが園児達のことを大事に思っているってことでしょ?それだけ保育園の先生という職を誇りに思ってる、ってことですよ」
頭に、ぽん、と手を置かれる。
うわぁ……すごくいい人。