第1章 ずっと、これからも片想い
そして、高校を卒業すると、私たちは別の道を歩み出した。
裕くんは声優になるために。
私は保育園の先生になるために。
まだ売れない無名声優の頃の裕くんはすごく辛そうだったけど、きらきらしていた。活き活きしていた。そんな裕くんを、私は影からひっそりと見守った。
そして気付けば、裕くんは私の裕くんじゃなくて、みんなの裕くんに変わっていた。
いや、そもそも私の裕くんだったことなんて、一度でもあっただろうか。自惚れすぎだ。
裕くんはモテるんだろうな。
女性のファンが多いに決まってる。
だって、あんなに可愛くて、かっこいいんだもん。きっと、本気で裕くんのことを好きになる人だって出てくる。それに、共演した女性声優さんも……。
どうして、裕くんを好きになっちゃったのかな。他にもいっぱいいるのに、どうして裕くんなの?
わざわざこんなにも辛い恋を選んだ私はひょっとしてマゾ?
裕くんに対する想いはいつも裏表。
大嫌いだ、と思えば、大好きとも思っちゃう。
大好きだ、と思えば、大嫌いとも思っちゃう。
この片想いはいつまで続くのかな。
答えは分かってる。
きっと、ずっとだ。
これからもずっと、永遠の片想い。
裕くんを好きじゃなくなる時なんて、きっと来ない。