第1章 ずっと、これからも片想い
「俺、声優になりたいんだ」
私が君に、だめ!だなんて言えるはずがない。言えないに決まってる。君には才能がある。だから、人気になるのだなんて目に見えていた。
頑張って。
──嫌だ、やめて。
人気になりますように。
──人気になんてなって欲しくない。
有名になってね。
──有名になんてならないで。
私だけの裕くんでいてよ!
なんて、言える訳がなくて。
頑張って欲しい。裕くんがうまくいきますように。そう強く思えば思うほど、後から後からそれと同じくらい強い嫌な気持ちも溢れてくる。
声優になりたい、と目を輝かせながら私に言った君には見せられないくらいの、暗くて汚くて嫌な私。そんなのは全部心の奥底でせき止めて、私はいつもの"いい幼馴染み"を演じる。
「裕くんになら出来るよ!応援してるから!」
君は、ありがとうって私に笑いかける。
「ゆりはやっぱり優しいね」
私が優しい?
私の本当の気持ちを知ったら、幻滅するくせに。幼馴染みっていう、こんな脆い鎖なんて簡単に断ち切っちゃうくせに。
ほんと、大嫌い。
うそ。
大好きだ、ばか。