第1章 0と1が創り出すシナリオ
部屋には熱心にボタンを押す音とテクノポップな音楽が響き渡っていた。
ベッドの上や棚の上に乱雑に置かれたソフトのパッケージ。床に落ちてるゲーム機。
そんなものに目をくれることもなく私はただひたすらに、まっすぐに目の前のラスボス戦に挑んでいた。
地面しか見ていなかったのがいつの間にか眼下のゲームに目をやるようになったのはいつからだっただろうか。
物心ついた時から人と関わるのが苦手で、視線はいつも下。親戚のおばさんが来ても、おじさんがお小遣いをくれても、友達といても、なにをしていても不安でいっぱいで、なにをしていても恐怖に押し潰されそうで。
なにをしててもどこにいてもだれといても、楽しくなくて。
全てがモノクロだった現実に、0と1が織り成す世界は私に色をくれた。
ゲームの中だったら、私は世界を救える。
ゲームの中だったら、私はどんな相手とも戦える。
ゲームの中だったら、こんな頭脳でも難事件を推理できる。
ゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったらゲームの中だったら。
ゲームは私に可能性をくれる。
朝起きて、適当にご飯食べて、ゲームして、気づけば夜。
そんな生活。それが日常。
私のすべてはゲームだけ。
ゲームなら。ゲームでなら。
私は世界から必要とされる。
そんな毎日。