第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
拷問なんて日常茶飯事じゃねぇか。
得体の知れない人物を裁くなんて今に始まった事じゃない。
俺らにとってそれが当たり前であって、偶然にもそれが名前だった…。
たった、それだけの事…。
そんな事を考えながら暫く付近をうろついていた俺は河原の端に何かがあるのに気が付いた。
「なんだ…?」
俺はそれに近付いて行くと徐々に人だと判明し、小さく蹲り震えていた。
「おい、大丈夫かっ…って」
名前…?
間違い無い!
この独特な雰囲気を持つ人物は彼女しかいない…!
「…っ、名前!?」
何故名前がこんな所に居るんだ…!?
俺は彼女の元へ急ぎ、蹲る身体を抱き起こす。
「…っ!?」
自身の掌を二度見してしまう程に触れた彼女の身体は尋常じゃなく、熱かった。
それに、自白剤と言ってもたかが知れてる筈だ。こんな長い間続くなんて、土方さんと山南さんは一体何の薬を使ったんだ…!?
「土方さんと一緒だったんじゃないのか!?」
俺は彼女に向かってそう言った丁度に、雲間から月明かりが彼女の顔を映し出した。
「っ…!」
なんて表情してやがるんだ…。
月明かりでさらに妖しく映る名前に俺は釘付けになる。
あの時…総司に悪戯されて飛び付いて来た時よりも甘くて危険な色香が俺を包み込んだ。
っ…!
名前の表情だけでも拙いってのに、この色香がさらに俺の理性を削って持って行っちまう…!
俺は必死に理性と戦っていると彼女を支えていた手に熱が重ねられ、か細い声でゆっくりと紡がれた。
「はは…、わた、し…声出てます、ね、逃げ、ちゃいました…やっ、ぱり…左、之さんは…」
知っていたんですね…。