第1章 我儘な隠し事(青峰)
決意した通り、私は彼に"嘘をついた"。
案の定、とんでもない迫力で睨まれ、今まで以上に低いトーンで説明を問われた。
「どういう事だ?あれだけ好きだったバスケをあっさり辞めるとか笑えねぇ冗談だな」
その態度は、理解が出来ないと言わんばかりの雰囲気であり怒りも籠ってるように見えた。
それもそのはず、小さい頃から彼…キセキの世代と世間で言われてる7人のうちの一人である青峰大輝との約束を守れないと今ここで宣言しているのだから。
その約束は、お互いプロバスケプレイヤーになろうと言うもの。
叶う叶わないは無かった。でも本気で目指そうというもので、大輝はほぼ確実になれるでしょう。10年に一度とか言われる天才児として注目浴びているし、実際負ける事はほぼないようなもの。それもあって、中学3年から現在進行形で性格が随分やさぐれてしまった。それでも、根は変わっていないから余計な事は基本言わずバスケを続けてきていた。
でもそれも、今日で終わり。
「言葉の意味だよ。興味が失せたの。続けていける気がしないからバスケを辞めるの」
そう吐き捨てるように鼻で笑うように"嘘をつく"。
その直後、言葉よりも先に顔の横から大きな音がした。大輝が勢いよく壁に手を置いた音だった。
「約束どうんだよ。一緒にプロの選手になろうって言ったじゃねぇか」
悲痛に似た大輝の言葉に心が揺らぎそうになる。でも、もう戻れない。戻ってはならない。いや、出来ないと言った方が正しい。
「そんな約束してたっけか。ごめんね、申し訳ないとは思うけど興味が失せた以上、プロになった所で面白くないもの。大輝は夢でもあるから目指すんでしょ?応援してるからね?」
今できる精一杯の笑顔で目を合わせずその場を去った。あの場に居続けるなんて出来なかった。笑うどころか、泣いてしまう。必死に我慢していたものが台無しになってしまう。
大輝から見えない所まで来るなり、誰かに見られる前に必死に走った。誰もいないどこかへ。