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名の無い関係

第17章 離れる距離と近付く距離


賑やかだった食堂が静まり返る。
エルヴィンとアゲハが揃って顔を出したのがその原因だろう。
アゲハだけならば、頻繁に一般兵と変わらずこの食堂で食事をしており珍しい事ではないが、二人揃って、というのは稀だ。
ましてはこの兵団のツートップ。
先に食事をとっていた一般兵が固まるのも無理はない。
上官、ましては団長とその補佐がまだ座ってもいないというのに自分達が先に座ってしまっているという状況。


「…あまり歓迎はされていないようだな。」


それに気が付いたエルヴィンは困った様な顔をしていた。
こうなるだろうと予想できていたから自分はわざと食事を自室に運ばせていた。
しかし今日はアゲハに強引に連れ出されてしまったのだ。


「やはり外へ行こう、これでは皆、味のない昼食を食べることになりそうだからね。」


そうだね、とアゲハも苦笑いだ。
自分一人でここに来ていた時とはあまりにも違いすぎる。
今朝もここで食事をとったが、こんな雰囲気にはならなかった。
視線は感じたが、兵達がこちらに遠慮しているような事はなく彼等は普通に過ごしていた。


『なんだか寂しいな。』


食堂を後にするアゲハはボソっと呟いた。


「仕方がないよ、君もキース団長とは一緒に食事をとったりしなかっただろ?」

『それはそうだけど。』


けれどそれは理由があって、それと同じ理由が今の自分達に向けられているならば悲しいとアゲハは零す。


「上官は嫌われる者だ。」

『そんな事ないよ、私はエルヴィンの事好きだもの。』

「ヒューヒュー♡相変わらず仲がいいねー!」


もう結婚したら?とニヤニヤ笑いながらハンジが言った。
彼女も珍しく昼食を取りに行くところだったようで、彼女の制御役となっているモブリットと一緒だった。
申し訳なさそうな、居心地の悪そうな顔をした彼には同情のような感情を抱かずにはいられない。


「私は結婚などしないよ、これ以上守るモノが増えてしまっては戦えなくなるからね。」


本気なのか、冗談なのか。
真意の解らないエルヴィンの返答にモブリットは更に申し訳なさそうな顔をした。
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