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名の無い関係

第16章 その日…


エルヴィンが調査兵団団長に就いて一ヶ月。
新たな兵士長にはミケが就任し、彼の下で新兵を中心とした入団から年数の浅い兵達が日々訓練に励む。
ハンジは研究開発班の班長を、アゲハは団長補佐という新たな役職に就いた。
団長補佐と言えば聞こえはいいが、団長という表立った役職に就いてしまったエルヴィンが今まで担ってきた表立って出来ない事をやるのが主なアゲハの仕事だった。
最初は嫌々だったが、「君にしか頼めない」とエルヴィンに言われ渋々ながらアゲハは頷いた。
結果、アゲハは日がな一日壁上でダラダラと過ごす事が多くなった。
部下を指導する必要がなくなってしまい、自分自身の能力が落ちないならば訓練をする必要も無くなった。
本来ならば補佐として、エルヴィンにくっついて動くべきなのだろう。
けれどエルヴィン・スミスという男は補佐等全く必要はしない。
むしろ集中したいときは一人にしてくれ、というタイプの人間だ。


「アゲハー!暇なら実験に付き合ってくれない?」

『内容にもよるなぁ。』


ハンジに声を掛けられ、のんびり昼寝をしていた体を起こす。
わざわざ馬を使ってここまで呼びに来たのだから、きっとそれなりの実験なのだろう。


「新型の巨人捕獲装置なんだけどさ!」


興奮気味にその詳細を説明し始めるハンジは自分とは違い、とても楽しそうだ。それに充実した毎日を過ごしていると感じる。


「…でね!って聞いてる?」

『あ、ゴメン。なんだった?』


大丈夫?と顔を覗き込まれてしまった。
そんなに心配されるほどに、今の自分は腑抜けているのだろうか。


「ねぇアゲハ、やっぱり辞めなよ。」

『なにを?』

「アゲハは自由に飛んでないとダメになりそうだよ。」


言われてみれば。
昼寝の為にしか立体起動装置を使っていない。


「やめた!実験は今度にしよう!」

『え?』


そう言うとハンジは訓練場へと馬を向けた。
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