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名の無い関係

第16章 その日…


既存の兵に新兵を加えた143名で出発。
約10時間後に戻った数は42名、その内五体満足だったのはその半数。
キース団長を含めた歴戦の幹部兵と、既に巨人との戦闘の経験があった兵達。新兵で無事に戻れたのはアゲハ率いる第三分隊の二人だけだった。
今回の調査も壁外を知らない者達からしたら、「巨人達に生き餌を与えただけ」に見えるだろう。
雷雨に閉じ込められた廃城から進軍してすぐに、多数の巨人に襲われた。
戦闘を避けて進軍する事など出来る様な状況ではなく、それならば立体起動装置を使用するのに都合がいい森林地帯へ入った。
結果、陣形は総崩れとなり帰還を余儀なくされた。
そうなった一番の要因は、荷馬車を守り切れず補給隊が壊滅してしまった事だろう。
現状の装備だけで全滅せずに壁内へ帰還出来た事が奇跡的だったが、そんな事は民衆には理解されない。
シガンシナ区、トロスト区とやっと街中を抜けウォール・ローゼ内に帰還、あと数分馬を走らせれば兵舎に着くと皆の表情が緩み始めた時だった。
シガンシナ区の扉が超大型巨人に破壊され巨人の侵入を許したと聞いたのは。


「動ける兵は何人いる?」

「兵舎に残る者を含め80人弱です。」


この人数はあくまでも「動ける」兵数で、その半数は兵舎に残っていた負傷兵。無傷の兵達も壁外調査から戻って間もない幹部兵と、兵舎で看護をしていた者のみ。
戦力としてカウントしたら現状の調査兵団にいる戦える兵数は限りなくゼロに近い。


「中央政府から直ちに王都防衛任務につくよう勅令が来ています!」


まだ兵舎に辿り着いてもいない屋外で、更には馬上で開かれる緊急軍議。
兵舎から伝令に来た若い調査兵団兵士と、ウォール・マリア側から顔を真っ青にして伝令に来た駐屯兵団の若い兵士。そしてキースとエルヴィン、それに生き残った僅かな兵達。
ミケの異変に立ち止まっていたアゲハ達はまだ追い付いていなかった。


「こんな時の為のアンタ等(調査兵団)じゃないのか?!」


相当な状況を見て来たのだろう。
何かを悩む様なキースに向かい、駐屯兵団の兵士は言った。
行けと命じてくれ、という視線と、行くなと命じてくれ、という視線が真っ直ぐにキースに向けられる。


「エルヴィン、隊を別けろ!」

「はっ!」


キースは苦虫を潰した様な表情を浮かべていた。
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