第14章 最強争奪戦
キース団長との最終打ち合わせを済ませ、出立の日取りが正式に決まった事を伝える為にアゲハの執務室へ急いだ。
彼女には陣形の最終確認と人員配置の案を出す様に頼んでいる。
きっと今頃はそのどちらも終わらせているだろう。
「アゲハ、入るぞ。」
ノックなしで入室するのはいつもの癖だ。
「…来ていたのか。」
しかし、執務室の主人の姿はなくリヴァイがソファーに座っていた。
「アゲハは?」
彼の向かい側に座ろうとして、自分の質問の答えを見つけた。
リヴァイの膝に頭を乗せてアゲハが眠っていたのだ。
彼女がここまで熟睡しているなんて信じられない。
執務室でウトウトしているのはいつもの事だが、ドアを開ける音や小さな声にすら気がつきすぐに起きてしまうのに。
「…参ったな。よくそこまで懐かせたもんだ。」
それとも逆か?とリヴァイをからかう様に言ったエルヴィンは、静かに向かい側に腰を下ろした。
「勝手にコイツが寝落ちしただけだ。食ったら眠くなるなんざ、ガキか動物だな。」
ローテーブルには食べかけのスコーンが置かれていた。
「彼女が無防備に寝落ちするのは私の時だけだと思っていたんだがね。」
確かに以前、アゲハはエルヴィンに寄りかかって昼寝をしていた。
「お前がコイツをこき使うのは勝手だがな。」
そう言うと彼女がやり終えていたのだろう書類の山へ視線をむけた。
あの量を数日で、しかも昼間は通常の訓練をしているのに終わらせていたのだ。
きっとろくに睡眠をとっていなかったのだろう。自分の疲れなど微塵も外には出さず、いつも通り。
「確かに、今回は少し無茶をさせたな。」
「エルヴィン、お前がコイツをどう扱おうが俺には関係ないがな。コイツをお前が裏切る事は許さねぇ。」
「怖い顔だな。」
「それにいずれコイツの心臓は俺がお前から取り返す。」
リヴァイの言葉にエルヴィンは驚いた様な顔をした。
そして盛大に笑った。
『…ん?ぇるび?』
その声にはさすがにアゲハも目を覚ます。
まだ寝惚けた目で、大笑いするエルヴィンとしかめっ面のリヴァイを交互に見ていた。
「アゲハ、君は本当に凄いな!」
何のことだ?とアゲハはますますわからない、と困った顔をしていた。