第13章 変化
そろそろ世代交代が近いと噂が流れたのは、壁外遠征の日取りが決まった頃だった。
キース団長のやり方では犠牲を増やすだけだと、支援者達も言っている。内地の平和ボケした支援者達は新しい物語の展開を期待しているのだ。
すっかり支援者達のご機嫌取りはエルヴィンとアゲハの仕事になっている。
王都からの帰りの馬車で、精神的な疲労でぐったりしてしまっていたアゲハはぼんやりと考えていた。
「流石に熱は出さなくなったが、相変わらず疲れはひどい様だね。」
『リヴァイにも言われた。最近の私は見てられないって…。』
相変わらずアゲハをよく見ているな、とリヴァイの観察力には感心してしまう。
兵士としての訓練、分隊長としての会議、そしてこうして兵団幹部としての任務。
どれもソツなくこなす優秀な人材だと思われがちだが、彼女は無意識にかなりの無理をしている。
あの急な発熱以来、注意していたがここ最近の彼女はあの時に近いと感じる。
「手を焼く部下が独り立ちして楽になったかと思ったが?」
『リヴァイは危なっかしいから。班長を任すのは賭けなの。』
あれで誰よりも強く仲間を想っている。
だからこそ、彼にはまだ部下を持たせるべきではないとも考えた。
きっと班員達の身が危険に晒されたら、自分の命を捨ててでも助けようとするに違いない。
残酷な事だが、一般兵が十人、二十人死んだとしても、彼だけは生き残らなければならない。
それが今のリヴァイの置かれた立場で役目だ。
他の誰の犠牲があっても、必ず無事に帰還すること、人類の希望であり続けることが彼の背負った宿命なのかもしれない。
「君は本当にリヴァイを大事にしているな、少し妬けてしまうよ。」
『…嘘ばっかり。』
対面で座っていたが、エルヴィンはそっと体をずらし隣にスペースを作る。
それに気が付いたアゲハは嬉しそうな顔をして、ちゃっかりそこに座り直した。
そのまま馬車の揺れに合わせてエルヴィンの膝に頭を落とす。
「着いたら起こしてあげよう。」
愛しい娘を寝かせ付ける様な優しい手がアゲハの頭を撫でる。
子供扱いだと言いながらも、それを受け入れいつの間にか本当にアゲハは眠ってしまう。
「休めるのは今だけだからね、ゆっくりおやすみ。」
二人を乗せた馬車はジーナの扉をくぐり抜けて行った。