第13章 変化
私が行ってもよかったんだけど、まだリヴァイは個室じゃないからさと全く悪びれた様子もなくアゲハは言った。
「いいのか、分隊長様が男を連れ込んで。」
『男って!リヴァイはそんなことしないでしょ?』
信用されているのは嬉しいことだが、この場合は喜べない。
書類を踏まない様に足を進め、座れそうな場所を探す。
カウチはもはや荷物置き。ベッドしかなさそうだ。
仮にも女の部屋の女のベッド。許可なくそこへ座るのは如何なものかと思ったが、さっきのアゲハの言葉からそれを気にする必要はないだろう。
「…で、わざわざ呼び出した理由はなんだ?」
『うん、たいしたことじゃないんだ。これ、ずっと渡しそびれてたから。』
差し出されたのは小さな四角い缶。
見たことのない綺麗な装飾が施され、高価なものだとすぐにわかった。
「なんだ、これ。」
『去年王都に行った時にお土産に買ったの。リヴァイ、紅茶が好きみたいだったし。渡そう渡そうと思ってたけどだいぶ過ぎちゃった、ごめん。』
まだ飲めるはずだよ!ととってつけた様にアゲハは言った。
去年と言えば、彼女の部下ではなかった時期。
エルヴィンと貴族達のご機嫌取りに忙しくしていた頃のはず。
「わざわざ買ったのか?」
『紅茶には癒し効果があるらしいし。まぁ、今のリヴァイにはあんまり必要ないかもしれないけど。』
確かにあの頃。
アゲハと言う後ろ盾が無くなり兵団内で孤立しかけていた。
「お前、バカだな。」
『な?』
「少しは他人より自分を労われ。最近のお前は目に余る。」
自分にも立場が出来たからだろうか。
今ならアゲハの見えないたくさんの苦労がほんの少しわかる気がした。
だらしなくてどこか抜けていて、それでも彼女の言葉には信頼を持てた。そう部下達に思わせるのに、どれだけ彼女が頑張っていたことか。まして自分の様な異物まで抱え込んで。
『部屋のことなら、うん…散らかってるね。』
「まぁ、それもあるが。お前、もう俺の前でまでそこまでしてくれなくていい。」
『そこまでって?』
「わかんねぇんだよ、最近。本当のアゲハってそんなだったのか?」
アゲハの目が変わったのを俺は見逃さなかった。