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名の無い関係

第10章 誰のための敬礼


壁外調査に出る為には最低でも騎兵300名必要だ。
団長1名、分隊長4名、先任班長1名、班長8名、看護兵6名、給与係5名、馬医師5名、兵士270名で構成される。
現在の兵団所属の兵士全員を総動員してやっと、だ。


「勧誘式で何人入るか…。」

「人員配置を見直し、最低限の人数にしたとしてもやはり、現状のままでは厳しいですね。」


調査兵団内の定例軍議。
先日、エルヴィンとアゲハが王都に調査報告をし戻ったばかり。
案の定、好き好んで危険な壁外へ出ようとする頭のおかしな連中の集まりに、今以上の支援は出来ない、と言うのが王政府からの返答だった。
希望者がいるなら他兵団からの移籍は自由にしていいと許可は得たが、王都の平和維持を主な任務とする憲兵団や、内地の治安維持や壁の見張り役の駐屯兵団から、わざわざ調査兵団へ移りたいという兵は滅多にいない。


「エルヴィン、また腕のたつ輩を見つけるか?」

「いや、それも難しいだろう。」

『リヴァイみたいな奴がホイホイいるわけないよ。』

「訓練兵団から引き抜くってのはどうでしょうか。」

「それは無理だろう。」


新兵勧誘式まではまだ三ヶ月以上ある。
このままでは、次の壁外調査は半年後になりそうだ。
それでなくとも税金の無駄使いだと非難されているのに、調査に出る事も出来ずに過ごして何になると言うのか。
このままでは本当に税金の無駄使い兵団になってしまう。


『そういえば、王覧試合って今年はないの?』

「そうか!それだよアゲハ!」


何気ないアゲハの質問にハンジはバン!っと机を叩いて立ち上がる。


「そこで優勝しちゃおうよ!きっと調査兵団へ入りたいって奴が出てくるよ!」


強さを求めるのは兵士なら当たり前。
ましてそれが王や貴族達の前で披露され認められる強さとなればより一層の価値がある。
今までは憲兵団所属の兵士がその誉を得ていたが、それは完全な実力ではなかった。
憲兵団には勝ってはいけない、そんな暗黙のルールがあった。


「エルヴィン、どう考える?」

「確かに面白そうな案ではあります。実際、本気でやれば戦闘技術において負ける事はないでしょう。ですが…。」


それは相手が巨人だった場合です、とエルヴィンはピシャリと言った。
王覧試合はあくまで人間対人間の武闘大会の様なもの。
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