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名の無い関係

第6章 シェイクアウト


それが何を目的にしたものであっても、壁外に出るのだから犠牲が出る事は想定しなければならない。
殉職者54名。
負傷者113名。
行方不明者が殉職者に含まれているとはいえ、とても想定していたものとは違いすぎる。


「仕方ないよ、今回は酷過ぎたんだ。」


シガンシナ区を出てしばらくは順調だった。
きちんと索敵班が接近する巨人を見つけられていたし、攻撃班もしっかりと機能していた。
本隊へ近付けさせない事が第一で、足止めの効かない奇行種のみを討伐。
この調子ならば次の特区まで初めて殉職者も負傷者もなしで辿り着けるのではないか、と皆の表情も明るかった。


『…結局の所、人間の敵は人間だったってことでしょ。』


いつもの緩い雰囲気がまるでない。態度も大きく口調も荒い。
そんなアゲハを見たのは久しぶりだった。


「駐屯兵団の方から正式な謝罪はないんだろ…。まぁ、あの状況は見慣れない平和ボケした連中には修羅場にしか見えなかったんでしょ。」


だから仕方がない、これは事故だったと思うしかない、そう自分に言い聞かせるようにハンジは言った。
駐屯兵団からの誤爆がなければ、今頃は皆が笑顔で休息を取っていただろう。
いくら滅多に開閉されない扉を開けたからといえど、たかが数体の巨人を見ただけでこの様とは。


『…今回の調査はここまでになるのよね?』

「そうなるな、無傷の兵だけではもう続行は不可能だ。」


今夜はこのまま、ここで野営。明日、兵団本拠地へ帰還する。
調査出来たのは全体の四分の一。この結果をどう評価する事が正しいのか。


『エルヴィン、もうこんな事は嫌よ。ウチの分隊の兵達もたぶん他の兵達もそうだと思うけど。巨人と戦って死ぬ事は恐れないよ。』


味方に見捨てられることは絶対にあってはならない事よ!とアゲハは言うと会議の席を立った。
まだ終わったわけではないのに、とキース団長は苦い表情を浮かべたが誰も彼女を攻めようとはしない。
今までに殉職者を出さしていなかった彼女の分隊が壊滅したのだ。
殿として特区に本隊が入るまで、向かってくる巨人を相手にしていた攻撃班諸共、駐屯兵は砲撃したのだ。
結果、無傷で帰還出来たのはアゲハだけ。
彼女を慕う兵達は砲撃から彼女を庇い壊滅。
生き残ったのはリヴァイとソーマのみ。
その二人も怪我を負っていた。
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