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名の無い関係

第5章 タオル


「夜中に男を入れていいのか?」

『男女の部屋の行き来は禁止されてないよ。消灯時間がどうのって言うならリヴァイも同罪でしょ?』


彼女はそう言うと背を向け何かを探し始める。


『あったあった!』


差し出されたのは真新しいバスタオル。


『前に言ったでしょ!リヴァイも使っていいって。これ新品洗濯済み。』


だからどうぞ、そう言って彼女は奥のドアを指差した。
お世辞にも綺麗にしてあるとは言えないシャワー室。
けれど疲れた身体を癒し清めるにはこれ以上のものはないと感じる。
ふわりと香っていたアゲハの匂いはシャンプーだったのか、と自分の髪を洗いながら気が付いた。
使っていいと確かに言われたが、まさか本当に使う事があるとは思わなかった。
そして気がつく。この後着るものがない。
折角シャワーを浴びたのにあの汚れたシャツを着るのは嫌だ。
結果、いつまでも出てこない俺を心配して声を掛けてきたアゲハに爆笑された挙句、これだ。
たまたま彼女と夜勤だったエルヴィンのシャツを借りるはめになった。
部屋に戻り自分のシャツを取ってきたら、もう一度シャワーを浴びるからな!と我ながら苦しい捨て台詞だった。
他人のシャツを一時的とはいえ着ることが不快だった。
ましてあの男のものだなんて。


「驚いたな、上手くやってるとは思っていたがここまでとは。」

『ここ?』

「ここに入れるのは私だけだと思っていたんだが?」

『あー、そういうこと!』


開けようと手を伸ばしたドアの向こうから聞こえる会話。


「妬いてしまうな、そこまでリヴァイは君の特別になったなんて。」

『特別なのかなぁ。』

「私がこの部屋に招かれるまでどれだけ君に手を焼いたことか。」

『あはは、それは。まぁ、はい。』

「リヴァイが気に入ってるのか?私よりも興味がある?」

『ない!って言ったら嘘になるかな。でも、心配しないで。私の心臓はあの日から今もこれからも、鼓動が続く限り…。』


勢いよくドアを開ける。
それに少し驚いたような顔で二人がこっちを見ていた。


「アゲハ、タオル貸せ!」


まるで何も無かったかのようにいつも通りの二人にイライラが増した。


『リヴァイ、今が深夜ってこと忘れてない?』


アゲハはそう言うと用意しておいてくれたのだろう、タオルを俺に差し出した。
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