第2章 執事【ユーリ×ルイプリ】
「ねえ、今日はどんな風にされたの?」
ドレッサーの前に座って、髪を梳かしていたレナの耳元で、猫目の執事が低く囁いた。
「っ……ユー、リ…」
「こういうとことか、触れられたんじゃない?」
後ろからレナの華奢な身体を抱きすくめながら、ユーリが首筋に顔を埋める。
「いやっ」
そう、嫌だ。
恋人のルイ以外の男に触れられるなんて。
小さく訴え、身を捩って抵抗するけれど、細く見えても、ユーリは男。
女性のレナがいくら抵抗しても、しなやかに鍛えられた腕は、今夜も放してくれはしない。
ルイと、秘密の恋人になって以来…
ルイと会った夜は
必ず、ユーリが部屋で待っていて、こうして触れてくる。
どんなに抵抗しても、やめてくれない。
ユーリを執事から外すように、言いたいけれど、非の打ち所のない完璧な仕事をする彼を、誰が解任するのだろう。
自分が受けている仕打ちを暴露してしまえば、簡単に片はつくのだろうが…
女性として、こんなに恥ずかしい目に合っている事は、知られたくなかった。
みんなに。
誰よりも、ルイに。
『キョウハ ドンナフウニ サレタノ?』
それは、始まりの合図。
どうすれば、この悲しい時間から逃れられるか分からないレナは、きゅっ、と唇を噛み、身体を硬くした。
くすくすと、楽しそうに笑いながら、ユーリは、レナの髪をかき上げ、襟足を覗いた。
「ああ、やっぱり」
ユーリはそこを、そっと、指先でなぞる。
「んっ…」
ぞくり、とする感覚にレナは身を震わせた。
「ここに跡付けるの好きだよね、ルイ様」