第3章 ~ひらり、ひらりと久遠の破片~
「名前…」
我は綺矢の前に立ち、手を伸ばす。
前より何か雰囲気が変わったか。
「あぁ。髪が短くなったのか」
それもあるのだが、多少幼くなった様にも思える。
一体、豊臣で何があったのであろうか。
「貴方は誰?」
やはり、と言うべきか。
我の声は聞こえておらず、その上此方の姿は見えてはいない。
辛うじて人間と言う事だけは分かるようだ。
我はそなたを探しておった。
もっと、そなたに聞きたい事が山程あるが、今は#名前#、そなたに触れていたい。
例えこれが夢でも構わぬ。
「そなたが無事であるのなら…」
我は名前を抱きしめる。
事もあろうか、抱きしめる腕が微かに震える。
あぁ、本当にそなたなのだな。
我の、名前なのだな…。
「貴方はだあれ?」
もう一度問われ、我は聞こえていない#名前#に向かって話す。
「我の事なぞどうでも良いわ」
名前、あぁ、我の名前。
何故、我の元から去って行った…。
もっと、そなたを感じていたかった。
もっと、もっと、もっと…。
「あぁ、我の名前…」