• テキストサイズ

【HQ】出会いの化学変化。

第1章 着信


「出会い」という言葉を聞いたら、どんなふうに表現していいと思う?


以前、私よりずっと年上の綺麗な女性に、そう聞かれたことがある。彼女は、私が小さい頃から通っていた、東京のあるバレエスクールに勤めていた先生であり、優れた感性やセンスを持ち、そして身体を自由自在に操れる芸術家肌の女性だった。空を翔ける鳥をモチーフにした演出で見た、可愛らしい鳥の囀りから逞しい鷹揚への変化でさえ一瞬にできるような彼女の流麗な踊りは、私の憧れだった。


まだ体も硬く、表現力のない平凡な私に対して、彼女はこう語った。

まずは、一つ一つの出会いを、心の中で描いてみようね。

どんな色、どんな形、どんな声、どんな動きで表現するのかを真剣に考えて。そして自分を、そのイメージの中に溶かしてみて。

生活にはつまらないことばかりだと思ったりするけど、出会いは、常に新しい刺激をもたらしてくれるから、イメージトレーニングとしてはいい素材だよ。


それで私は、「出会い」について少しずつ機敏に感じるようになっていく。


バレエは、東京から地方に引越してからやめたけど、先生が教えてくれたことは、常に自分の中に存在して、膨らんでいくと感じる。


そして、ここまでとは全く違う、私にとって少し異質でもある「出会い」が現れた。過去の出会いとつながりながら、私を、自分の中の未開地へ導いていく。


/ 9ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp