第1章 彼の話
「サーヴァント、アーチャー。アルジュナと申します。マスター、私を存分にお使い下さい」
私が世界最後のマスター適合者として認知され、七つの特異点における人理修復の旅をしていた最中。
彼は召喚された。
私はなんの触媒も、用意していなかったのだ。
それにもかかわらず突然召喚サークル上で、今までとは全く異なる眩い光の中から彼はその姿を現した。
眩い光の中から見えたのは日本ではあまり見ることのない褐色の肌。
真っ黒な、少し毛先に癖のある猫っ毛。
彼の肌とは正反対に眩しいほどの純白の衣服。
それから、恐ろしいほど黒く、鋭い、瞳。
それは私を射殺すようでいて、でも何処かで奥底でチラリと見える悲しい情。
私は目が離せなかった。
私は声が出なかった。
驚いたから、というのもあるだろうが、
一番は、彼に見惚れていたからだろう。
なぜ、と。
考える時間も必要なく、
彼が『美しい』からだ、
と私は答えるだろう。