【文スト】トリップしたら心中申し込まれたんだけど?
第4章 貴女は誰ですか?
太宰
「君は一体誰だい?」
太宰さんは顔を離して、そう聞いた。
太宰
「私は君とは一度もあったことが無いはずだ。
それなのに、何故君は私の名前を知っているんだい?」
『そ、そうです…よね。』
なんだかとても苦しい。
太宰さんの周りだけ酸素が無いみたいだ。
私は苦しくて、うまく息ができなくて、何も喋れずにいた。
太宰
「君は一体誰なんだい?」
あぁ、息が苦しい。
そうか。
“本当の自分”を出そうとしていたからこんなに苦しくて息ができないんだ。
嫌だな…。憧れの人にも偽りの自分を見せないといけないなんて。
でも、そっちの方がまだ楽だから。
『“僕”の名前は美采。
沖田美采といいます。挨拶が遅れて申し訳ございません。』
そう言って“僕”は自分にも、太宰さんにも嘘をつく。
本当の自分は心の内に閉じ込めたままで。