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付喪神様の御座します処【刀剣乱舞】

第4章 ある暖かい日の朝【歌仙兼定】


「……温かい」
莉央は深く息を吐きながら、鼻を抜ける出汁の香りを楽しんだ。
「今日のお味噌汁、なんだか沁みるねぇ」
莉央の幸せそうな笑みに、歌仙は小さな笑みを浮かべながら頭をかいた。
(そんな笑顔を見せられたら……ねぇ)
「……? 歌仙? どしたの?」
莉央は自分を見下ろす歌仙を見つめ返した。
「……僕は料理が得意で、本当によかったと思ってね」
「どうしたの、急に?」
莉央は不思議そうに首をかしげた。
歌仙は困ったような笑顔でため息を吐いた。
「困った主を直接支えられるからね」
「困ったって……し、失礼ね!」
「でも事実、困らせているじゃないか」
「う……それは……」
莉央は恥ずかしそうに唇を尖らせた。
歌仙はそれを見届けると、踵を返して厨へと戻っていった。

(本当に、困ったものだ。僕の主には)
歌仙はおかずの味見をしながら、そう考えた。
ここに自分が顕現してから、どれ程時間が経っただろうか。
料理に唄に、人の身を得られなければできなかったことはたくさんあった。
けれど今の彼にとって、人の身を得られて一番嬉しかったことはーー。
「歌仙ー!! おかわりちょうだい!!」
厨の入り口から聞こえた声に、歌仙の思考が中断した。
「もうすぐ朝食の時間だろう? それまで待ってくれないか」
歌仙は返事をしながら、ため息をついた。
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