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付喪神様の御座します処【刀剣乱舞】

第1章 何光年でもこの歌を口ずさみながら【同田貫正国】


彼女は林の中を着物が乱れることも構わず、走り抜けた。
やがて林を抜けると、人々の暗い列が彼女の視界に入った。
その中には、彼女の想い人の父母の姿もある。
彼女は大きな木の影に隠れてながらその葬列の様子を伺った。
後に彼女が知ったのは、彼女の想い人は海を越えた国の戦場で病死したこと。そしてこの国へ帰って来たのは、彼の愛刀だけだったということだったーー。



それはある夏の日であった。
莉央は鍛冶場から近侍が連れてきた新しい刀を執務室へ通した。
執務室へ続く襖をくぐり、部屋を一頻り眺め回したその刀は、最後に真っ正面に座る莉央を鋭く見据えた。
「あんたが、ここの大将か?」
「うん、島原莉央です。よろしくね」
莉央は不満気な彼をよそに、努めて明るく振る舞った。
「女かよ……あんた、本当に戦が出来るのか?」
その刀の不満の理由を理解した莉央は思わず眉を吊り上げた。
「失礼ね! これでもそこそこやってきてるんだから! その辺の本丸よりは……多分」
そこそこ、ねぇ。とその刀はため息混じりで呟いた。
「ま、戦場が用意されてるなら文句はねーけど」
「と、とにかく。あなた、なんてお名前? 色々やらなきゃいけないことがあるから、とりあえずそれだけ教えなさいな」
莉央は刀帳を取り出すと、パラパラと捲った。
「そーだったな。俺は、同田貫正国ーー」
そこまで聞いて、莉央はバタンと勢いよく刀帳を閉じた。
「今、同田貫って言った!?」
突然大きな声を出す莉央に、同田貫は思わず目を丸くした。
「もしかして、優之介さんのこと覚えてる!?」
そんな同田貫に構うことなく、莉央は身を乗り出して詰め寄った。
同田貫は彼女の行動に、たじろぐばかりだった。
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