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付喪神様の御座します処【刀剣乱舞】

第2章 山を降りたら【山伏国広】


やってしまった。
莉央は心の中で呟きながら、深い森の中で頭を抱えていた。
今彼女は、本丸へ帰るための道を歩いている……はずであった。
(進めど進めど、まるでゴールが見えない……)
莉央は買い物をしに、バスで万屋のある町へと向かったのだ。
ちょっとした買い物だからと、一人で向かったのが運の尽き。
うっかりバスの最終便を逃してしまったのだ。
通信端末も充電が切れ、迎えを呼ぶことはできない。
それ故莉央は徒歩で帰ることを選択したのだ。
(おかしい……バスは舗装された道路しか通らなかったはず……なのにこの道は一体……)
彼女の歩く道は、およそ道とは言えない場所であった。
道は急な坂道になっていて、木の根が露出して少し気を抜けば足を取られてしまいそうである。
更に木々が生い茂り、莉央の視界を遮り彼女の行く手を阻む。
(これは、もしかして、いわゆる獣道というやつ、なのかな?)
莉央がそれに気がついたのは、彼女の足元が泥だらけになり、汗で服がベタベタになる頃であった。
もしかすると、もう帰れないのかもしれない。
もしかすると、私はこのままここでーー。
莉央の脳裏に不吉な予測が飛び回る。
それは彼女の気力や体力を削ぎ、更なる不吉な予測を呼ぶ。
そんな悪循環の中であっても、莉央は手に持った万屋の袋を手放しはしなかった。


それは莉央の疲労がピークに達した時であった。
「主殿? 主殿ではないか!!」
彼女の耳に、木々がざわつく音と聞きなれた声が聞こえてきた。
それは仏の思し召しか、とにかく今の莉央にとっては幸運に他ならなかった。
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