第1章 《アラン B.D》君だけ
「うわぁ、綺麗!意外と近くに海があるんだね!」
海風に乗るようにふわっとリアの美しい髪とコートから覗くワンピースの裾が揺れはためく。
午後から休みを貰い、厩舎で愛馬にブラッシングをして居たところに午前の公務を終えたリアがやってきて
次の公務は夜だから長い休憩で暇だと言うので乗馬を教えるのも兼ねて連れ出した。
冬の海の海岸は昼間でも人気はあまりなくまるでプライベートビーチのようだ。
馬から降りてその海の水面のように瞳を輝かせてはしゃぐリアに自然と目元は綻ぶ。
「まぁな、ちょっとも道はわかりづらいけどあの道を通れば割とすぐ来られるんだ。」
「そうなんだ!お城に来てからあまり公務以外で城下以外のところに行くことがないからすごく新鮮!
アラン、連れてきてくれてありがとう!」
「ん。まぁお前もーちょっと乗馬練習が必要だけどな。」
「あ…やっぱりそうだよね。さっきもうまく方向転換できなかったし。」
ついさっきまでは少女のようにきらきらと瞳を輝かせていたかと思うと
風に揺れる髪を耳にかけながら眉をハの字にし苦笑いする表情の豊かさはプリンセスというよりただの女の子。
「でも十分乗れるようになったんじゃねーの。ほぼフォロー要らなかったしもうすぐだろ。」
今日は1/23。
レオと俺の誕生日
こいつはまだ俺の誕生日は知らない。
陛下の元、ジルやレオといった優秀な人々と自分達のような騎士団は良いバランスを保てている。
だから割と厳粛でありがながらも穏やかな静寂の日々が続いていた。
自分の職務には誇りや遣り甲斐を持っている。
きっとレオやジルだってそう。
退屈ではない。
けど、単調にも思えた毎日は今目の前の一人の変わったプリンセスにより大きく変わった。
「それよりアラン、せっかくのお休みなのに私に乗馬教えてていいの?」
「なんで?」
「いや、私は嬉しいんだけど私のお守りになっちゃうと仕事とかわらないかな…とか
アランは忙しいからお休みは貴重というか自分の時間に使った方が良いんじゃないかって思って。」
おずおずと伺うような目で見つめてくるリア。
思わず揶揄いたくなる。