第3章 《ルイ》 はじめて
ジルやルイの思惑通りリアはあっという間に舞踏会参列者に囲まれた。
リアは一人ひとり丁寧に挨拶をし、必ず少しでも会話をして最後にはまたあの笑顔を向けていた。
最初は彼女に興味はなく王の座目当てだった者も彼女の美しさや人としての温かさに惹かれて行く者が後を絶たなかった。
「あーあ、リア様また人たらししてる。」
その姿を見守るアランやレオの傍にいたユーリが誰もが思っていたことを口にした。
「だな。あの特技なんとかならねぇの?ルイだいじょぶかよ。」
アランもその様を見ながら同意する。
「こんな人気のプリンセスもなかなかいないよねー。当人は無自覚と来ているから始末が悪い。ルイも頑張らないとね。」
レオはどこか可笑しそうに笑っている。
一通り参加者に挨拶した後、リアはジルに耳打ちをされたのを合図に、中座してバルコニーに来た。
「この後はダンスですので少し休憩してください。」
リアにそう言い残して水が入ったグラスを渡してジルは去った。
国の為とはいえたくさんの人に会い、話をするのも体力がいる。
そんな彼女の疲れを感じたジルはちゃんと休憩を入れてくれたのだ。
「リア。大丈夫?」
「…ルイ。」
声をかけられた方へ振り向くリア。
「お疲れ様。疲れてない?」
「うん、大丈夫。ルイも来てくれてありがとう。
ルイがいるって思うと頑張らなきゃって思えて力が出るよ。」
また微笑むリア。
その笑顔が何とも言えないじらしさを含んでいた。
「そう。でも俺はちょっと元気ないかも。」
ルイは目を伏せる。
「…えっ、やっぱり私ルイに嫌な思いさせてしまったんじゃ…」
一瞬で先ほどの笑顔は曇り不安の色を宿すリア。
「皆リアのことを狙っていて、リアが俺のものって言えないのがちょっと悔しい。」
リアの髪を一房掬い口づける。
「そ、それは皆王座がほしいだけだよ。私なんか…」
慌てて否定を口にするリア。
そういう慌てた姿も見たくてわざと落ち込んで見せた。
「いや、今日の君は本当に美しくて皆君と挨拶した後も君を目で追っていたよ。勿論、俺もだけど。
それだけ君は魅力的なんだ。」
髪に口づけたまま蠱惑的な目で見つめられリアは胸が高鳴った。