『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第7章 寝ても覚めても、近づいても離れても
「朝倉さん、一緒に帰ろうぜ」
夢の中で黒尾くんが出て来た
最高で最悪な夢…
正夢になんてならないのに
覚めないでと思うのに
覚めて欲しいと思ってしまう
淡い夢物語だ。妄想が夢になるなんて
有り得ない、あってはならない
自分がとても気持ち悪い。
黒尾くんが私の名を呼ぶ
けれど、これは夢だ
分かっているのに
貴方が私に笑い掛けるから
想いが止められない、大好きだと
伝えてしまいたい。
「私…黒尾くんの事が」
大嫌いです、そう夢の中で伝えてしまった。
そこで私は目が覚めた。
見馴れた部屋、あぁやはり夢だったか…
忘れてしまおう、なにもかも。
ありはしない幻想に憧れながら
いつものように学校へ向かった。
ーーー…
電車を待ちながらスマホを弄る
その時後ろから声を掛けられた
ビクッと両肩が浮いて
まさか、まさか…そんな事って有り得ない
そう思いながら振り返る。
「おはよ、朝倉さんって朝早いんだな」
「な、な、なっ!」
「今日は朝練早いんだわ、主将だから猫又監督に呼ばれててな…」
「へ、へぇ…そう、なんだ?」
私の顔、引きつってないだろうか
夢が正夢になるとか本当にあるの?
待って、待って、待って…
どうしよう、顔がにやけそう
口元を隠し視線を反らす
「折角だから、一緒に行っていい?」
「うぇ、ええっ!?あ、いや…うん?」
「朝倉さん、大丈夫?」
「だ、大丈夫…」
うん、ごめんなさい
全然大丈夫じゃない
電車は空気を呼んではくれず
満員電車であった。
「やっぱり私…一つ電車遅れて乗るよ」
「なに言ってんの?僕がいるから大丈夫です。良し乗り込むぞー…」
いや、でも…なんて考える私は
彼の声を聞き満員電車にダイブした
ぎゅうぎゅうになりながら
プシューとドアが閉まる音を聞く。
前で鞄を持ちながら
満員電車をやり過ごす
ベタ過ぎる展開に羞恥で顔が紅く染まる
しかし、考えてはいけない
黒尾くんはユカの彼氏であり
黒尾くんは私の大切な友人だ
「悪い、やっぱ…後の電車の方が良かったかも」
「ううんごめん。私はいいけど、それより…黒尾くんは大丈夫?」
私を満員電車から少しでも
楽にさせてあげようとしているのか
私をドア側に寄せて
黒尾くんは私を挟んでくれていた。
世にいう壁ドンである
こんなに甘過ぎる展開を
誰が予想出来ただろうか。