『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第5章 『友達』を演じるのにももう慣れた
二人が付き合って数週間が経った
最初は笑う事がぎこちなかったけれど
今は上手く笑えている
教室から出て行ったあの日
帰って来てから、注目されてしまう
ただならぬ関係だと思われ
周りから夜久くんと付き合っているのか
などの冷やかしが聞こえたけれど
夜久くんが低く怒った声で
「お前等、いい加減にしろよ…」
と冷え切った言葉で伝えた為
付き合っているのかを聞かれなくなった。
私と夜久くんに謝る声が所々聞こえて
私は苦笑いで大丈夫だと言った
ーーー…
「ごめん、四葉…」
「ん、いいよ…黒尾くんとお昼かな、行ってらっしゃい」
この数週間、ユカは楽しそうだ
黒尾くんと自習の勉強をして
お昼へ向かい一緒に食べて
一緒に帰る日々、青春だなー…
おとぎ話ならここで
めでたしめでたし
なんだろうけど…
脇役の私はどうなるのだろう…
ユカの隣りには黒尾くん。
その後ろ姿は見慣れつつある
でも…私の心は見慣れない
見たくない、二人が恋人なんだと
認めてしまうのが怖いから…
「朝倉、食堂行こうぜ?」
「うん、行こうか…」
最近夜久くんに誘われる事が増えた
バレー部の海信行くんや
後輩達と昼食を食べる日々
これはまさに青春だろうか
そう思えた気がした。
「私がいていいのかな…」
「俺が誘ったんだからいいだろ?」
「いや…周りにも悪いかなって」
「いや、朝倉さんがいるだけで女子に免疫がない後輩達は嬉しそうだからいてくれると助かる。特に山本らへんが」
海くんの言葉に、山本猛虎を見る
ぱちりと視界に入った
山本くんにぺこりと軽く頭を下げると
ぷるぷる小刻みに震えて
ガタリと椅子から立ち上がり
「ありがとうございます!」
となぜかお礼を言われ
頭を下げられてしまった。
そんな時、ふと視線がそこに向いてしまった
黒尾くんとユカが食堂へ来たのが分かった
食べていたモノを鞄の中へ入れて
急いで椅子から立ち上がった。
夜久くん達が私の行動に驚いていて
「ごめん…私帰るね」
「朝倉!」
戸惑う声を聞き
食堂から逃げるように立ち去る
ぱちりと黒尾くんと視界が重なった
「朝倉さん、もうお昼済んだの?」
「うん、二人は今からだよね?ごゆっくり…」
私は茶化すように出て行く
今すぐに出て行きたかったから
『『友達』を演じるのにももう慣れた』