『ハイキュー!!』近くで想う…黒尾鉄朗or夜久衛輔
第19章 例えるならそれは――
高校三年生なんて
あっという間に終わってしまう
私は大学へは進まず
就職する事に決めて正社員として
事務局で働く事になった
黒尾くんや夜久くん達は
大学に行くらしいと友人から聞いた
そこでまたバレーをするようだ
それじゃあもう会う事はないかな
なんて考えると少し寂しくも思えた
ーーー…
卒業式…泣く友人の姿を見て私は微笑む
私は泣かなかった、いや泣けなかった
という言葉の方があっていると思う
結局私は黒尾くんに想いを告げられず
終わってしまった。静かになった教室で
自分が使っていた椅子に腰掛けて
鞄に付けた黒尾くんに良く似た黒猫を
つついて見たりして遊んで見た
「今日で最後か…早かったな」
妙に寂しい…結局バレンタインの事も
聞けずじまいになってしまったし
校門の前では記念撮影する三年生や
泣いて見送る一、二年生の姿が
確認出来た。あっ…バレー部発見
特徴的なトサカ頭の彼は見て分かった
あっ…黒尾くん見付けた。
これで10秒間見続けて…
貴方が上を見上げたら
玉砕覚悟で告白しよう…
なんて有り得ないか…
そう笑って見下ろして
数を1から順に数えて行く
9、10そう言い終わる前に
ふいに上を見上げて教室を見た
黒尾くんがいる。
目が合ったような気がした
ガタンと椅子が跳ねて立ち上がる
「えっ…嘘!?」
一人で作ったゲームで
まさか上手くいくとは思っておらず
私はあたふたしてしまう
帰ってしまおう、うん
誰も聞いていないし見ていないし…
そう鞄を肩に掛けて
教室を出ようと準備に取り掛かる
荷物を入れて立ち去ろうとした
次の瞬間…貴方は私の目の前に現れた
全力疾走したのか息が荒くて
咳き込む黒尾くんにぎょっとする
ハンカチを取り出して彼に渡すと
優しく落ち着くまで背中を擦った
ーーー…
「朝倉さん、俺聞いてないんだけど…」
「えっ、なにが?」
「大学行かずに働くって事…」
「あぁ、言ってなかったから…」
バレー部は行かなくていいの?
とか思いながらも黒尾くんは
誰もいない静かな教室で
私の隣りに座っていた
今しか言えない
いうんだ、私。
勇気を振り絞って
貴方が話し掛けてくれた時から
私は黒尾くんに一目惚れしてました
そう伝えるんだ
「あの、黒尾くん…聞いていい?」
『青春』という言葉が似合う気がした。
『例えるならそれはーー』