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なるもの

第1章 プロローグ


 そう言い聞かせながらポケットから自宅のカギを取り出す。このカギでドアを開けて、靴を脱いで荷物を置いて、服を着替えたら、今日はもう何もしない。絶対に何もしない。いつもはちゃんと作るご飯も、今日は冷蔵庫の残り物で済ます。よーし、絶対に何もしないからな。
 雨に濡れてうっとおしく目にかかる髪と雫を払いつつ、カギを開け、少々重めのドアを開ける。玄関に入り、荷物を床に置いたところで一息つく。やはり、家に帰っても誰もいないのは、寂しいものだ。特に今日のような日は、ご飯を食べながら誰かにゆっくり話を聞いてもらいたい。神様、今日1日私を試練を与えたのだから、「おかえり」の一言をかけてくれる素敵な男性くらい用意しておいてもらいたい。明日には消えてくれて構わないから。
 電気もつけずに、薄暗い中ブーツの紐を解きながらそう思っていると、カギを落としてしまった。玄関の硬質な床にあたった金属音がしたので、屈みこんでそのあたりを手探りで探す。あぁ、見つからない。クソが。おっと思わず口が汚くなってしまった。
 その時、外でごろごろと巨大な猫の喉が鳴るような音がした。雷だ。ついに雷まで鳴り出した。天気も最悪だ。青白い閃光が走り驚きでしばし動きを止める。あぉ、でもおかげでカギが見えた。早く拾おう。
 ふと目の端に異質なものがうつった気がした。

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