第14章 ケモロンパ
『えーっと、チアキちゃんは……缶詰半分か。それを食べやすいようにスプーンで解すって書いてあるな。』
「(朝と夜で1日1缶食べてるよ)」
『夜はカリカリも少しあげるんだね。千尋ちゃんのメモは丁寧だなぁ。』
「……(それより、缶切りは家にありましたか? この猫缶はプルタブが付いていませんよ)」
『あぁっ、缶詰が開けられない!。』
「……(やはり)」
「(千尋ちゃん、缶切り入れ忘れてる……)」
『ゴメンね、ちょっと近場で缶切り買ってくる。チアキちゃん、すぐ戻るから今はカリカリだけで我慢してね。』
「にゃっ(大丈夫、私の方こそ迷惑かけてごめんね)」
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「(眠らなくていいんですか)」
「(……うん、もうちょっとで誉稀ちゃんが貸してくれたゲームが最高得点を更新しそうだから続けるの)」
「(そうですか、でもそのハードはあと少しで充電が切れますよ)」
「(…………あ)」ブツン
「(ほら、言った通り)」
「(ちぇっ……あとちょっとだったのにな)」
「(睡眠を取れという暗示とでも思って寝たらどうですか。猫が寝不足だなんて誉稀が心配しかねません。特にあなたは誉稀が友人から預かっている大切なペットなんですから、誉稀は余計気にかけることでしょう……体調管理くらいは自分で責任を持ってください)」
「(……そうだね、もう寝るよ。………あ、寝る前に1ついいかな)」
「(何ですか)」
「(……君、日向君に似てるね。君は日向君知ってる?)」
「(創のことですか)」
「(うん、色々似てるから血が繋がってるのかなって)」
「(創は僕の兄弟です)」
「(へぇ、そうなんだ)」
「(七海千秋は創の知り合いなんですか?)」
「(うん、家知ってるからよく遊びに行くよ。カムクラ君は行かないの?)」
「(……たまに誉稀に連れていかれて、強引に面会させられる程度ですね)」
「(日向君からいつか「この前初めて俺の兄弟と会ったけど、あんまり話したり出来なかった」って教えてもらったことがあったんだけど、あれって君のことだったんだね)」
「(僕らは目も開かない仔犬のうちから里親募集で散り散りになったんで、お互い血の繋がった兄弟だという実感がまったく湧かないんですよ)」