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君と私と(非)日常

第11章 物陰の幽霊


真夜中の校舎にお化け屋敷気分で入った。
窓から星明かりが差し込む廊下を歩いていく。
多少の照明もあるが、やはり昼間とは違い不気味な雰囲気が出ていた。
そもそもここは昼間も廃墟のように草木が生い茂っているのだ。夜になれば尚更のことだろう。
この学園ではもう2人も死んでしまったから、幽霊が出る、なんて噂が立ってもおかしくはない。

『…………。』

ふと、立ち止まる。
2階の玄関ホールを見下ろせる場所まで来たが、誰かが入ってくる姿が見えたのだ。
暗くてよく見えない。
背格好から言っても女子だか男子だか分からない、低くて細いシルエットだった。
『(誰だろう……)。』
こっそり眺めていると、人影は食堂や体育館のある通路へ消えていった。
あの方向ならこちらへ来る可能性もある。
もし来たら、どうしようかな。
こんな夜中に出歩くなんてお互いに怪しい。
相手も私に驚くだろう。
………驚く、か。
死角もたくさんあるし、曲がり角を利用して脅かすことが出来そうだ。
もともと私はお化け屋敷気分で来たのだ。
待ち伏せして物陰から飛び出すくらいはして帰りたい。
超高校級のメイドの研究教室の前の曲がり角へ移動して、ジッと待った。
『…………。』
足音が聞こえる。
階段を上る音だ。こっちに来る。
ドキドキしながら身を屈めた。
……段々近付いてくる。
近付いてきて……それで、通り過ぎた。
『(……あれ?)。』
陰から顔を出す。
当然足音は通り過ぎて行ってしまったため、誰の姿もない。
『(……一応、誰なのか確かめておこう)。』
昨日の今日だ。また何かあるかもしれない。
足を忍ばせながら近寄る。
バタン、と扉の閉まる音がした。
あっちには教室が2部屋と、あとは昨日死んだ子の研究教室がある。
どっちの教室に入ったんだろう。
きょろきょろ見回していると、小さなピアノの音がした。
どうやら今さっきの人影は超高校級のピアニストの研究教室に入ったらしい。
慣れない手つきで、曲を奏でるでもなく途切れ途切れに鍵盤を押しているようだ。
誰だろう。
……何となく予想は出来る。
予想通りなら、いま彼は感傷に浸っている所だろうから放っておいた方がいいのだ。
空気を読んで帰ろうと思い、踵を返す。
「………誰?」
扉越しに声が聞こえ、思わず肩が跳ね上がる。
『…………。』
最原くんの声がした。
哀しみがよく伝わる、暗い声だった。
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