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君と私と(非)日常

第10章 キルミーはママの味


頼られるのはメイドも母親も同じだわ。どちらも強くあらねばならないし、そういうところがきっと悪く思わない要因になっているのね。
「さっき王馬君が言ってた「ママのプリン」っていうのは良いかもしれないわね。家庭の味は時に一流シェフにも出せない魅力だって出せるもの……」
風邪で伏しているときは、幼少期ならきっと誰もが母親に看病してもらっているはずだわ。
頭を撫でてやって、多少の我が儘も聞いてあげて、早く治るようにって愛情をかけるの。
そんな優しい母親のプリンを作って、希灯さんが元気になるようにするのよ……!



3回のノックが聞こえた。
「希灯さん、入るわよ」
斬美ちゃんだ。様子を見にきてくれたみたい。
「今プリンを冷やしている所だから、あと30分後に持ってくるわね。氷がそろそろ溶けてきた頃だろうから、取り換えるわ」
『斬美ち"ゃん……。』
ありゃ、声が枯れてる。
「あら……ちょっと待って、生姜湯も作るわ。蜂蜜は多めの方が良いかしら」
私に駆け寄り喉を両手でひと撫ですると、素早く氷を新しく入れ直してから踵を返して食堂へ戻っていってしまった。
『…………ゲホッ。』
咳は少しくらい収まった。
斬美ちゃんが看病してくれてるから気持ち的にも楽だ。
一人だったら氷も食事もないし、ただ寝れば治るってスタンスで冷たい部屋で丸まるだけだっただろう。

「希灯さん、生姜湯を作ったわ。これを飲んでちょうだい」
『斬美ちゃ……ありがとう………。』
温かくてほんのり甘い生姜湯が喉に染み込んでいく。
『美味しい……温まるよ。』
そう返すと、斬美ちゃんは優しく微笑んで「良かったわ」と言った。
「……そろそろプリンが固まってるはずだわ。すぐ持ってくるわね」
そうして斬美ちゃんはまた出ていった。



食堂へ行くと、冷蔵庫からプリンを1つ持ち出している王馬君と鉢合わせした。
「王馬君、プリンはちゃんと固まっているかしら?」
「うん、カッチカチだよ!」
「そんなわけないでしょう……」
「ふっはは! さすがにバレちゃうかー」
冗談を受け流しながら冷蔵庫の中を見る。
「…………! プリンが無いわ!」
「あ、これが最後の1個なんだ。そういやさっき百田ちゃんが、うめぇうめぇって言いながら何か食べてたのがそれかも」
そう言いながら王馬君がプリンを一口掬って食べた。
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